突然ですが、ミステリ小説が好きです。
ジャンルとしても人気があるし、好きな方は多いですよね。
映画も大変好きなんですが、近頃はテレビの前に2時間座る事が苦痛になってきたため、寝る前や移動中なんかにパラパラ小説を読むことの方が多くなってきています。
つっても電子書籍なんですが。
Nexus7とKindleアプリの組み合わせがとっても最高で便利です。
さて、ミステリ小説が好きだ、なんて言ったものの、年間に数冊読めば良い方という程度で、読むのも遅いため、間違っても趣味が読書だなんて言えません。
そんな状態でハズレ小説に当たった時のがっかり感といったらないですよね。
1週間もかけて読み込んだのに、こんなしょーもないオチかいな!と。
時間返せと思います。だがそれも経験かと、思えるようにもなってきました。
あと、作家の合う合わないってのもあると思います。
文体が合わない、構成が合わない、トリックが合わない、様々です。
自分にとっては伊坂幸太郎さんがその一人です。
彼の書く小説は人気もあるし、いくつか読んでみた限りは、確かに面白いと思います。
若くしてとてもすごい事だと思います。
だけど合わない。
伏線回収が見事だと言われますが、なんか整いすぎてるきらいがあるんですね。
数学の公式みたいに、こうすれば必ずこう解けますよ、みたいな、スーッと通り過ぎてるというか。
それと、これは勝手なイメージですが筆者の根底にある「真面目な人間が馬鹿みるのは嫌。悪い事してるやつは殺されても文句言えない」的な思想がひしひしと伝わってきて、しんどくなります。
こういう理由で、あまり読みたくない作家さん、というのも多くあることでしょう。
そんなわけで、自分の好きなミステリ小説を紹介して、傾向をばらしていくので、見知らぬ人が「そんなあなたにはこれ!」と面白い小説を教えてくれることを期待してみたいと思います。
作家単位でまとめていきます。
京極夏彦
もうメジャーになりすぎて、またか、と思われそうですが、大好きな作家です。
氏の作品は「妖怪小説」などと呼ばれて敬遠している人もいるのではないかと思いますが、かなりレベルの高いミステリ小説です。
圧倒的な情報量と様々な知識や考察の応酬、論理的に解決に導く工程など、初めて読むときは衝撃すら覚えます。
京極作品の特徴として、
- 各作品は同一の時間軸上に存在して、世界は繋がっている
- ページ数がものすごい。文庫版なら凶器になりえる。
- 電子書籍では別だが、小説版では改ページの時に文脈が途中にならないように、必ず区切りの良い所で次ページへつながる。
などがあります。
多くの作品が出てますが、大きく分けて3つの分類ができます。
- 戦後の昭和を舞台にした百鬼夜行シリーズ
- 江戸時代〜明治を舞台にした巷説百物語シリーズ
- それ以外
それ以外の中には近未来を舞台にした「ルー・ガルーシリーズ」というのもあります。
この中で圧倒的おすすめは2の巷説百物語シリーズなのですが、これを読む前には必ず百鬼夜行シリーズを読んでおく必要があります。
別にそういうわけでもないんですが、その方が面白さに深みがでます。
百鬼夜行シリーズは京極堂シリーズとも言われ、オーソドックスな探偵モノの体をしたシリーズです。
一般の探偵モノと違うのは、探偵役は拝み屋で、登場人物達に取り憑いた妖怪を「憑物落とし」することで事件を解決していきます。
いや、正確には事件は解決はしませんw
例えば「風が吹けば桶屋が儲かる」なんてことわざがありますが、意味を知らなければなんで桶屋が儲かるのか不思議だな〜と思うじゃないですか。
どんなことにでもそういうことはあるわけで、途中の経過や、誰が何をしたという事を知らなければ、なぜそうなったかということは分からないので不思議なわけですよね。
そのような事象を、昔の人は「妖怪」のせいにしたわけです。
山道を歩いていて川辺に近づくと、しょりしょり、という小豆を洗うような音が聞こえてくる。こんな所には人が住んでないのに、なぜなんだろう。
それは「小豆あらい」という妖怪が小豆を洗っているからに違いない。とこうなるわけです。
ですが謎を解明してみれば、実はイタチの泣き声だった、となり、なーんだ、となりますよね。
百鬼夜行シリーズはこのような感じで、ある一連の事件が起こるのですが、所々なぜそうなるのかわからず不思議に彩られている。
そこに妖怪がわき、事件に関わる者達は妖怪に憑かれてしまうわけです。
これを拝み屋である京極堂が、論理的に謎を解明していくことで、各人の憑き物が落ちていき、読者の憑き物も落ちるという事になるのです。
なので、謎は解明しますが、事件自体は既に起こってしまったあとなので、解決するわけではないです。
ただその謎解きがあまりにも圧倒的であり衝撃的で、記憶をなくしてまた読みたいと思えるものなんですね。
長々となりましがた、百聞は一見にしかずで、まずはデビュー作である「姑獲鳥の夏」と2作目になる「魍魎の匣」を是非読んでいただきたい。
このコンボは強烈です。
百鬼夜行シリーズは外伝を除くと8作発表されています。
上記2作品は必読ですが、それ以降はできれば5作目の「絡新婦の理」までは読んでいただきたい。
そっから先は京極好きになってしまったら読んだらいいんちゃうかな、って感じです。
自分は6作目の「塗仏の宴」もとても好きですが、7作目の「陰摩羅鬼の瑕」以降は正直微妙だと思いますw
さて、これで洗礼が済んだらやっと巷説百物語シリーズに移れます。
こちらの方は江戸時代を舞台にした京極夏彦版「必殺仕事人」なのです!
百鬼夜行シリーズは事件に隠れた謎を解明することで、妖怪の正体を露わにして憑き物を落とすという構造ですが、巷説百物語シリーズは逆で、人間の手で事件を起こし、そこに謎を散りばめることで、妖怪のしわざに仕立ててしまうのです。
これがもう奇跡的に面白い。時代感や作品間に漂う哀愁もなんとも言えない。
何故か巷説百物語は電子化が進んでません。
この後、続巷説百物語、後巷説百物語、前巷説百物語、西巷説百物語と続きます。
漫画版の巷説百物語もあるんですが、原作に忠実で読みやすくてとても良かったです。
でもやはり原作を読んでいただきたいですね。
これはずっと続けて欲しいのですが、話し的に続けていくのが難しそうで残念です。
また、巷説百物語の外伝的な位置づけである怪談シリーズから「嗤う伊右衛門」を必ず読んでいただきたい。
こちらの怪談シリーズは3作出ており、1作目がこの嗤う伊右衛門です。
これは有名な「お岩さん」の怪談話を京極風アレンジで仕上げたものとなっています。怪異が何故起こるのか、それを見聞きした者達からどのような風聞が発生するのか、ということが理解できていると、一層理解が深まるので、京極作品に慣れてから是非読んでいただきたいです。
京極夏彦が好きになった人にはこんな作家もおすすめです。
→江戸川乱歩
→横溝正史
→海野十三
京極夏彦の項なげーw
道尾秀介
最近イチオシの作家の道尾秀介さんです。
叙述トリックが得意という珍しい作家さんですが、読者をミスリードさせる能力が非常に高い。
ネットの評判は賛否両論なのですが、毎度ながら見事に騙されて、舌を巻きます。
最近は、叙述トリックとは関係ない、ちょっとだけ不思議感のある普通の小説、も書くようになってしまい、若干残念ではあります。
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このへんをこんな順番で読んでいくのがいいんじゃないでしょうか。
特にカラスの親指は、道尾作品の集大成とも名高く、とても面白いです。
阿部寛主演で映画化もされましたが、こちらもなかなか良く出来ていて小説はちょっと、という人にもおすすめです!
あまちゃんで有名になった能年玲奈もでています。
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乙一
なんかサブカル好き女子とかが好きな作家で出してきそうなイメージというか、最近名前すら聞かなくなりましたが、やっぱ乙一は良いですね。
妙な設定と妙な語り口と、予想のつかない展開が読書魂に火を付けます。
タイトルだけみても、どれが読んだ奴やったっけって感じなんですが、まあどれも面白いですよ。
めっきり新作を書かなくなったので、寂しい限りです。
綾辻行人
新本格という言葉を生み出したと言われる、綾辻行人さんです。
やはりこの実力はすごい。館シリーズはやはり出来が良いです。
真っ当な推理小説を読みたい方におすすめですよね。てか知ってますか。
その他作家陣
三津田信三
雰囲気が京極に近いものがあります。ベースはホラーよりだが、面白い。
三津田信三さんも電子化が進んでおらず残念。早く電子化してほしい!
殊能将之
お亡くなりになってしまいましたが、ハサミ男はめちゃめちゃ有名ですね。
西澤保彦
ある特異なSF設定の縛りの中で発生する事件を解決するという、面白いミステリを書かれています。
どれも特殊設定が面白く、よく考えつくなぁと思いますね。
島田荘司
名前をあげるまでもないミステリの大家ですが、下記2点は読んでないのなら、是非読むべき。
逆に合わない作家
宮部みゆき
別にきらいじゃないんですが、好きでもない。
松本清張と通じる所があるし、いかにも女性的な内容だなぁという感じがします。
プロセスに重きを置くのか、結果に重きを置くのか。
宮部みゆきや松本清張は前者ですよね。
我孫子武丸
殺戮に至る病が名作と名高いが、なんか先が読めてしまっていまいちだった。
でも、ゲームの「428」はとてもおもしろかったので、他の作品は面白いのかもしれない。
有栖川有栖
綾辻行人さんと安楽椅子探偵の企画などもやっているし、きっと面白いんだろうなあと思うんだけど、文体が合わないw
作家名がそのまま探偵役として登場するのも、あんまり好きではなくて、法月綸太郎さんもそんな内容のミステリを書いているけど、リアルとのギャップが目につきすぎてしまって、内容がはいってこないw
貫井徳郎
ネットでは評判が良いのですが、どれも先が読めてしまう。
使い古されたトリックの焼きまわしなのか、この人が最初だったのかどっちかはわかりませんがw
高野和明
これまた評判が良いんですが、13階段がいまいちだったなぁー
横山秀夫
半落ち、オチが微妙すぎ!
それでは、面白いミステリ小説の情報お待ちしております。
コメント
初めまして。はてブからやってきました。
好みに合うかわかりませんが、物理トリックで有名な北山猛邦さんや、25年前以上前に書かれたとは思えぬ優れた創造力で驚くこと必至の2人組作家 岡島二人さんをオススメしておきます。
乙一さんは多数のペンネームをお持ちです。青春小説をメインに書く「中田永一」、ホラーをメインに書く「山白朝子」、映像作家として本名の「安達寛高」などがあります。また、乙一名義のもので未単行本化の短編が多数ありますので今後いつかは新作が出ると思われます。
ミステリ好きの20代さん、ありがとうございます!
北山さんは未読なので、読んでみます!
岡嶋二人は1作と、独立後の井上夢人の作品を1つ読んだことが有りますが面白かったです!
はじめまして、やっぱり好きなものを語るのは楽しいので参加させていただきます(笑)
では僕のおすすめなどを…
・浦賀和宏「記憶の果て」
SF風味のミステリで、最近また新たに文庫化されました。
・藤原伊織「テロリストのパラソル」
文学畑から出てきた作家さんです。
・貴志祐介「青の炎」
人殺しが主人公とかオラ、ワクワクすっぞ。
・ハメット「ガラスの鍵」チャンドラー「さよなら、愛しい人」
ハードポイルド万歳。
・黒田研二「ウェディング・ドレス」
よくも悪くもメフィスト賞。
・ベスター「分解された男」ホーガン「星を継ぐもの」アシモフ「鋼鉄都市」
ミステリっぽいSF。ちょっと古い。
・オースター「ガラスの街」「幻影の書」
純文学とミステリの融合。読み物として文句なしです。
・舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日」
ミステリ、じゃなくて奇書。おもちゃ箱みたいな小説です。
・カー「皇帝のかぎ煙草入れ」
古いけど傑作だと思います。
あと個人的には、京極さんの「狂骨の夢」が魍魎や鉄鼠に比べて不人気である現状に不満があります(笑)なぜだ…?
他の方のコメントにもありますが、岡嶋二人は良いです。
「クラインの壺」「99%の誘拐」「そして扉が閉ざされた」の三作は特に傑作だと思います。
長文失礼しましたー
萌衣探偵さん
コメントありがとうございます!
読んでないのがいくつかあるので、参考にさせていただきます!
ややホラー系がお好みなんですね。私はあまりホラーは好きではないですが、道尾秀介さんと乙一さんの小説は好きです。
私の好きなミステリーは、天童荒太の永遠の仔、東野圭吾の白夜行、湊かなえの告白、Nのために、貴志祐介の青の炎、松本清張の砂の器です。
切なくて、悲しい、救いようのない、破滅的な、しかし情緒のあるミステリーが好きなので、こちらをベストに選びます。