浦島太郎の憂鬱

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最近auのCMで三太郎が登場するものが話題となっていた。

人によっては好意的な意見だったり、人によっては嫌悪感丸出しであったり

ここまで意見が分かれるんだなぁ、別にどうでもいいけど、などと

思っていたのだが、気になったのは三太郎のことなのであった。

 

これはau=エーユー=英雄=三太郎ということで

日本のおとぎ話に登場する英雄をモチーフとして、auを想起してもらおうという

試みなのであるが、はてさて。

桃太郎は分かる。鬼を退治するのだ、英雄だ。

金太郎もなんとなく分かる。

話はあまり覚えてないが、まさかり担いで熊をひきいて鬼を退治するのだ、たぶん。

 

しかし、浦島太郎はどうだろう。

みなさん。浦島太郎の話を知っていますか?

 

正直な所、私も仔細は覚えてなかったので調べてみた。

すると、こんな話だった。

 

浦島太郎はある日、海岸で子供達にいじめられているウミガメを発見した。

浦島太郎は子供達に15文をわたし、ウミガメを解放してもらった。

助けてもらったウミガメは恩返しに、浦島太郎を竜宮城へ連れて行った。

そこでは、あまりにも楽しすぎる宴が日夜行われており、あまりの楽しさに時間を忘れた。

おっとそろそろ帰らねばと思って、玉手箱をおみやげに龍宮城を後にした浦島太郎が村へ戻ると、村も村人も見覚えのないものばかり。

悲しみに打ちひしがれながら玉手箱を開けると、煙が出てきて浦島は爺になってしまった、という話なのだ。

 

どこが英雄譚なのか。

強いて言えばいじめられていたウミガメを助けたことは褒められるのだが

お金で解決とはどういった次第なのか。

浦島よ。お前は、おとぎ話の主人公としてのプライドはないのか。

 

こんな浦島太郎を三英雄の一人にするならば、むしろ一寸法師の方が

鬼を退治している分、英雄だろうと思うのだが、どうにも不思議である。

 

何故このように、三太郎として、桃太郎・金太郎・浦島太郎の3人が選抜されたのか。

やはり、それらの話の知名度の高さというのがあるのだろうが、

私はこれは「さくまあきら氏」の贖罪ではないかと考えている。

 

誰だそのさくま某という人物は、という人も多いだろう。

かのファミコンソフトの名作「桃太郎伝説」の製作者その人なのである。

 

なのである、といわれてもピンとこないと思うが、

桃鉄は知ってるでしょう?

それのベースになったRPGゲームなんです。

 

さくまあきらと言えば、ジャンプの巻末にある読者投稿コーナーである

「ジャンプ放送局」の責任者だったということでも有名だと思う。

 

桃太郎伝説が発売されるまでにも、おとぎ話をベースにした漫画やゲームというのは

数多くあったと思う。

しかし、複数のおとぎ話が混ぜこぜで出てくる、というのはなかなか無かったのではないだろうか。

「桃太郎」をベースにした作品はそれこそたくさんあるわけだが、この作品は桃太郎だけではなく金太郎や浦島太郎、その他多くののおとぎ話がモチーフとされ世界が構成されている。

これは非常に斬新だったはず。

 

そして、その中でもメインパーティーキャラが

「桃太郎」「金太郎」「浦島太郎」それと「夜叉姫」(鬼の中の王の娘)なのである。

実際にパーティーシステムが導入されたのは、「桃太郎伝説2」からなのであるが、

1から既に金太郎と浦島太郎は登場しているわけで、やはりメインの扱いだ。

 

実は、桃太郎伝説の発売以前にも、筒井康隆御大の短編作品に「桃太郎輪廻」というものがあり、これもあらゆるおとぎ話の主人公がごった返しに登場するそうなのだが、読んでないのでなかったことにする。

 

この作品以後、三太郎という扱いが定着していったのではないかと思う。

ちなみに同時期に連載されていた、THE・MOMOTAROH(にわのまこと作)もおとぎ話をモチーフとして、いろいろなおとぎ話の主人公の末裔が登場するという面白いマンガがあった。

それに、幽遊白書にもトーナメント編で「裏御伽チーム」というのが登場した。

 

なにかこのあたり、ジャンプ編集部には柳田国男的な民俗学に明るい編集者がいて、

口添えをしていたのではないかと勘ぐりたくなる部分はあったりする。

 

上で紹介した、THE・MOMOTAROHなんかは、設定なんかもしっかり練りこまれていて、よほど歴史やなんかに造詣が深くないと考えつかないような内容になっており、とてもおもしろいのでおすすめである。

 

 

さて、さくまあきらのお陰で英雄扱いされることになった浦島太郎だが、

研究者にとっても困った主人公であるらしいとのこと。

 

桃太郎は岡山県が舞台で、吉備津彦命がモデル。

金太郎は神奈川県(足柄山)が舞台で、坂田金時がモデル。

と、この二人は非常に明確明瞭なのだ。

それに比べて、浦島太郎ときたら、まず巷説自体が日本中に広く流布しており

どこが舞台かわからないありさま。

鬼退治もしないし、これだけ話の内容が特殊すぎるし、SF用語(ウラシマ効果)にもなっているように、時間経過が非常に雑。

これは、実は神武天皇がモデルではないかとの説が有力なのだそうだが、竜宮城の方が実はメインなのだという説もあったり、まあとてもややこしい。

 

さくまあきらの力を借りずとも、胸をはって浦島太郎は英雄だと言える日は来るのだろうか。

コメント

  1. swordbean より:

    こんなところでザ・モモタロウが出てくるとは、プロレスが好きなので読んでました。
    でも桃太郎も複数の話があるしゆかりの地も複数あるよ確か。今のオーソドックスな桃太郎は明治ぐらいに編集された話らしいけど

  2. 山田 より:

    私は浦島のモデルは丹後風土記に書かれている水江浦(の)島子説が有力かなと思います。島子は中国への大使でした。子が付く名前は小野(の)妹子と同じで使節を意味していたと思われます。浦島太郎は亀に乗って龍宮城に行き、地上に戻ってからは玉手箱を開け鶴になって蓬莱の山に飛んでいくという話ですが、島子には、次のような逸話があります。
    『ある日島子は五色の珍しい亀を釣り上げ昼寝をしていました。ふと目が覚めると、女がたっており、女はあなたと夫婦になりたいと言い出します。島子が受け入れると女は船を漕ぎ出し、浦島を蓬莱に連れていきました。蓬莱に付くと畢という8人の娘達と昴という7人の女達が「亀女(ひめ)が婿を連れてきた」と言いながら出迎えました。この女達は仙女で亀女も実は仙女でした。島子はその後仙界(蓬莱)の仙人を巡りながら亀女と夫婦生活を300年過ごします。ふと故郷が恋しくなった島子は亀女から玉手箱を受け取り故郷に帰ります。何も無くなった故郷で亀女を思い歌を詠みました。』
    この逸話はどう見ても架空話ですが、
    逸話に出てくる
    ・五色の亀
    ・蓬莱(仙界)
    ・仙人
    ・畢
    ・昴
    ・亀女(織姫)
    は中国の仙道に由来するもので、島子が中国に派遣され、女を作って日本に帰還するまでを脚色した逸話だと思われます。故に浦島太郎は島子がモデルで島子の使節生活を脚色改変した物語なんだと思ってます。
    因みに、亀女は仙道の織姫(織女)であるとされ、畢(牡牛座)、昴は仙道で星座を指します。七夕の用語に似てませんか?実は七夕も島子に由来するようです。恐らく天の川は日本海を指してたんでしょうね。

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